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 その後、私たち二人は両親にこってりしぼられた。  マリにどうしてこんな雨の中あんな場所に行ったのか皆で問い詰めると、やはり小鳥の巣が心配だったから行ったんだそうだ。  わたしは助けてくれた救助隊員のお兄さんたちに、深く頭を下げた。  この人たちが緊急で駆けつけてくれなかったら、わたしとマリは今頃……。  そう考えるとゾッとした。  やがてお兄さんのうちの一人が、私の腰に巻き付いたロープを見てこう尋ねてきた。 「もしかして、友だちを助けようとしたのかい?」 「そうです。失敗しちゃいましたけど」 「……その装備じゃ、無理だよ」 お兄さんは、落ちたときに破けたであろう雨合羽を見た。そしてため息をついたあと、真剣な眼差しでわたしを見つめた。 「もし、きみが大人になるまでその『助けたい』っていう気持ちを忘れなかったら……。きみは、ぼくらのような職が向いているかもしれない。きっと、良いレスキュー隊員になるよ」 あぁそれと、といいながらお兄さんはずぶ濡れになった「野鳥図鑑」を差し出した。 「この一冊で『友だちの居場所を見つけた』なんて、まるで奇跡だね」 「奇跡……、ですか?」 「あぁ。こんな大雨の中、行方不明になった人をすぐに見つけるのは難しいんだよ。きみがあの場所へ救助に向かったのは何かの運命かもしれないね」  
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