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二
わたしは、あのときのことをちょっとだけ後悔していた。
今思い出せば、わたしが疑問に思ったことに対して、彼女なりに正しい答えを教えてくれたのだ。
その行動の本質は、限りなく善意だと思う。
だから次の土曜日、もう一度あの山道に行くことにした。
もしかしたら彼女に会えるかもしれない、そう期待して。
* * *
土曜の昼下がり、わたしはもう一度あの遊歩道にきていた。
アカゲラはいない。
その代わり、キジバトがデーデーポッポーと鳴いている。
ベンチに腰をかけ、彼女の登場を待っていると、木の葉をザッザと踏みしめる足音が聞こえてきた。
来たかも! そう思って顔を向けると、お年寄りの夫婦が遊歩道を登っているのが見えた。
「ざ、残念」
わたしは次に来る人を待ったけれど、なかなか彼女は現れなかった。
そのとき、またあの音が、あのときと比べると少し軽めだけど、聞こえた。
コツコツ コツコツ
コツコツ コツコツ
「赤くないし小さいな、あれは何だろう?」
一人で首をかしげていると、こんにちは、と声をかけられた。
声のした方をみると、そこには彼女がいた。
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