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* * *
わたしがマリの家に遊びに行った時のこと。
お互いの進路について話す中、マリはわたしに秘密を三つ教えてくれた。
「あたしは大学に進学して、野鳥について研究したい」
「……マリはすごいなぁ。わたしは全然決まってない」
「大丈夫、ユズにもそのうち見つかるよ」
「そうかなぁ。なんか、わたしは流されちゃいそう」
「何に?」
「うーん。周りの人とか、運命とか?」
「……」
「ちょっと、引かないでよ」
「だって、突然運命とかいうんだもん」
「……マリひどい」
「でも、運命で決まっていたとしても、自分の道は自分で切り拓くものだと思うよ」
そしてマリは少し考えた後、こう言った。
「ユズにわたしの秘密、もう一つ教えてあげる」
「なぁに?」
「これをみて」
マリは前に見せてくれたポケット図鑑を取り出した。
「いくよ? 見ててね」
マリはアカゲラのページを開くと、手をそっとかざした。
コツコツ コツコツ
コツコツ コツコツ
「え? どういうこと?」
「プププ。こっちも見て、というか聴いて」
今度はキジバトのページを開いた。手をそっとかざす。すると……。
デーデーポッポー
デーデーポッポー
「鳴き声が聞こえる!」
「そうなの。この図鑑、私が手をかざすと鳴き声や生活音が聞こえるのよ。扱いが難しいから、休みの日しか外に持ち出さないんだ」
なるほど……。
紙の本を持つ理由がようやく分かった。スマホの動画では伝わらない、夢みたいな秘密があったのか。
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