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 わたしはいてもたってもいられなくなり、頑丈なロープとブルーシートを引っ張り出し、雨合羽を羽織り外に飛び出した。  普段はめったに使わない脚の筋肉まで血を巡らせて、できる限り早く走った。口の中に鉄の味が広がる。息はとぎれとぎれだった。 ――マリが危ないかもしれない。  わたしは全力で遊歩道を登った。 * * * 「つ、ついた」  なんとかいつもの場所にたどり着いたのはいいものの、雨がザアザアと降る音以外、何も聞こえなかった。 「マリー! いたら返事して!!」  大声で叫んだけれど、返事がない。  あちこち探し回っていると、ある立て看板を見つけた。  そこには「熊に注意!」という文言と一緒に恐ろしいヒグマの写真が張られていた。 「まさか、マリ……、ヒグマに!?」  そう呟いた時。
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