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コツコツ コツコツ
コツコツ コツコツ
こんな大雨なのに、なぜか木をつつく音が木立の間から聞こえてきたのだ。
走ってその音のもとへ行くと、その先はかなり急斜面になっていて、崖のようにも見える。
そしてわたしの足もとに、マリの野鳥図鑑が落ちていた。
コゲラの木をつつくような音は、これから聞こえてきたのだ。
わたしはこのとき、運命を感じた。
この図鑑が、わたしを導いていると思ったのだ。
「マリ! 近くにいるの!?」
おそるおそる急斜面の下を覗く。底には川が流れていて、もし落下でもしていたら水面に叩きつけられることになる。
そこで、ようやくマリを見つけた。
マリの身体は、重なる木々に守られるように引っかかっていた。そのおかげで、下まで落ちずに済んだみたいだ。
「マリ! ねぇ、マリったら!!」
わたしは腹の底から声を出した。するとマリがうっすらと目を開けるのが見えた。
「……ユズ、どうしてここがわかったの?」
「図鑑が落ちてたのよ! 鳥が木をつつく音が聞こえて、それで……」
「……」
「どうしたの? マリ」
「わたし、なんだかダメみたい……。すごくクラクラする」
「そんなことない! わたしが助けるから」
わたしはスマホで直ぐ母に助けを求めた。
とても怒られたけれど、すぐに消防署に連絡してくれると言っていた。
そしてわたしは持っていたロープで自分の身体を結び、近くの丈夫そうな木にもう片方を結び付けた。
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