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一
わたしは、野原ユズ。
大都市の喧騒からすこし離れた小高い丘に住む、中学二年生だ。
物心ついたころから、ここに住んでいる。わたしはこの丘が好きだ。
でも、暮らし慣れたこの土地は、居心地の良い反面どこかつまらないと最近感じるようになってしまった。
休みの日に外に出ることはほとんどなかった。何より外の景色に飽きてしまったし、だからと言って街中に行くのは少しアクセスが悪かった。
土日はいつも、スマホでWeb小説を読むかマンガを読むかの二択だ。
しかし、今日は違った。
朝起きて太陽の光を浴びると、身体中がむずむずしてしょうがなかった。
仕方ない。散歩に行こう。
ただし散歩といっても、鬱蒼とした森の中、急勾配の坂道を進む、登山のようなものだ。
ながくて暗い急な坂道を、息を切らして上っていった。
まだ中学生だというのに、体育の授業しか運動していないせいで、同級生と比べるとすぐに息が上がった。
クラスの皆みたいにもっと運動しとけば良かったな、と後悔しながら足を動かしていると、やがて規模の小さい森林公園に着いた。
暗い森の中、細い遊歩道が先へ先へと続いている。
それを見て、引き返そうか悩んだけれど、やっぱり進むことにした。
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