新しい世界で恋愛なんて難しすぎる

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私はノア。21歳の女性勇者。只今、レアなドラゴンを退治中。 このドラゴンを倒せば、大量の金貨を貰える。 あと、内臓は薬師に、皮は商人に買い取って貰えればもっと儲かる。絶対倒したい!! しかし。 小石に蹴躓いて、足を捻った。 一生の不覚。 その瞬間、ドラゴンは口から大きな炎を吐いた。 轟音と共に炎がまっすぐ私に向かってくる。 逃げる間もなかった。 私を炎が包む。 その時だった。 白い光に私は吸い込まれる。 「な!」 ドラゴンの炎を"熱い!"と思う暇も無かった。 私はその白い光が眩しすぎて、目を強く閉じた。 「ノアよ」 誰かが私を呼ぶ。 「だ、誰?」 グッと閉じている目を、何とか開ける。 すると、真っ白な白髪を肩まで伸ばした老人が立っていた。 「わしは神。 お前は今、ドラゴンにやられて死んだ。 しかし、今まで勇敢に戦い、真面目に生きてきたお前 の一生がここで終わるのは勿体無い。この本をやろう。 お前の次の運命を決める本じゃ」 老人、いや、神様?が、分厚い本を手渡してくる。 指のニ関節くらいの厚さだ。私はそっと受け取る。 「運命の、本?」 「そうじゃ。困ったことがあれば、好きなページをめくればよい。そこに書いてある言葉がお前を助ける。とりあえず、今から生活していく所を決めよう。早速、本をめくとよい」 私は、神様の言う通り、適当に本を開けた。 そのページには "魔物がいない世界もある。楽しんでいこう" と、書かれてある。 「魔物がいない世界なんて、あるの? いや、そんなよく分からない所でどうやって生活するの!?」 「向こうへ行ったら、準備は整ってある。心配せずに、生きてゆけ!ほら、じゃあ行きなさい」 神様はズンズン私に近づくと、肩をポンと押した。 私はよろけると、白い光に再び包まれる。 「え、うわ!きゃああぁぁぁ!」 雲の上から突き落とされたような気がした。 私は叫び声を抑えられず、叫んだまま、落ちていく。 「きゃあぁぁぁ、あ!あ!……あれ…」 気がつくと私はどこかで寝転んでいた。 目をパチパチさせて起き上がる。 ……ここが、新しい世界? 私が寝ていたのは、ベッド?私がいた村では木で出来ていたけれど、鉄?なのかな、鉄パイプで出来ている。 シーツや毛布は似ているわ。 私は周りを見渡す。 どうやら私1人だ。ベッドの置いてある狭い部屋と、隣はキッチンが見える。 キッチンの部屋に、そろそろと向かってみた。 やはり、誰もおらず、私1人だ。 色々と部屋を調べてみたら、水回りは前の世界と似ている。 まぁ、慣れれば生活しやすいだろう。 ベッドの部屋に戻る。 棚をみると、 「!」 あの神から貰った本がある。 手を伸ばしてみた。 が。 今は困った事はないから、安易にめくらないでおこう。 怖いし。 私は本を触るのをやめて、隣の棚を見た。引き出しの中に色々と服らしき物が入っている。 服と分かるけれど、着たことがない。 しかし、私が今着ているのは、多分寝巻きだ。 そう言うことは何となく分かる。 「うーん」 もう、窓からは陽が昇っている。何時だろう。 そう思った時にピピピ!ピピピ!と大きくて変な音がなり、肩をビクつかせる。 使い方など知らないのに、咄嗟に音の鳴る箱の上を叩いた。 うるさい音が止む。 「何これ…時計…か」 ……あぁ、そうか。私はこの世界でずっと生きてきた設定なのね。 だから、なんとなく、物の使い方がわかるんだな。
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