本編1-3

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本編1-3

 翌日。  催しもつつがなく終わり、後夜祭が始まった。 智衣(今年も終わっちゃったな……)  後夜祭のメインイベント、キャンプファイヤーが夜の闇を後退させる。  少し遠い位置からキャンプファイヤーを眺め、智衣は祭りの終わりをしみじみと噛み締めた。 怜「智衣先生っ!」  その時、呼名されて振り向いた。  そこには昨日の青年、怜が息を切らせて走り込んできた。  北原の学校帰りなのだろうか。  走った影響か制服も髪も乱れ、肩で息をしている。 智衣「どうしたの?」  智衣は目を丸くしながら訊ねた。 怜「あの、これ……!」  息を整えて深呼吸した後、怜は背中に隠し持っていたカーネーションの花束を差し出した。  赤と白が中心とされた花束は、見る者を穏やかにする魅力が溢れていた。 怜「カーネーション……。オレが初めてデッサンした、オレの好きな花なんです」  花束を差し出したまま、怜は真剣な表情で話し始めた。  智衣は拒むことなく花束を受け取り、一つ頷いた。  そして、一息おくと、怜は口を開いた。 怜「あなたと話して、自分で決めることの大切さに気づいたんです……。それで、この気持ち、伝えようって思って……!」  昨日の暗い表情とは違い、真剣に一言一言をハッキリと口に出し、正面を向いて話した。 智衣「うん……」  智衣は戸惑いながらも静かに頷いた。  頷きの後、怜は言葉を続けた。 怜「オレを救ってくれたあなたに伝えなきゃって……。それで……」  言葉の終わりは少しもごつき、俯いた様子になった。  しかし、最後に深呼吸をすると、顔を向き直し、堂々と口にした。 怜「あなたのことが大好きです! オレと付き合ってくれませんか?」  そこには怯えることのない、青年から男性へと覚悟を決めた表情を浮かべていた。  やがて回想を話し終え、怜は向かい側に座るウェディングプランナーの男性に優しく真剣に、それでいて自信を持って言った。 怜「っていうのが、妻との出会いであり、馴れ初めなんです」 【終】
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