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「ですがね刑事さん、おれも自分の作品を盗作呼ばわりされたらたまらないなあ。そこまで言うからには、証拠くらい出してもらわないと」
「そうですよね。じゃ、その紙束を貸してください。証拠として、指紋を採取してみます」
「……あん?」
「いえね、ヒトミさんが言うには、清川さんは自作品をプリントアウトすると、必ず自分の指紋を全ページにつけてるそうなんです。
つきやすい紙を選んでいると。
つまりマーキングですね。
まあ何万字という長編作品だと、指紋って要は皮脂ですから、スタンプ捺すみたいにきれいにはいかないでしょうが、判別くらいはできるでしょう。
その枚数だとコピーも処分も一苦労です、原本としてマーキングをしておくのは、意外と盗作の備えとしては有効なのかもしれません」
そういえばあいつ、エアコンを切っていたな。汗をかいて、指紋が残りやすくするためだったのか。
しかし、だ。
「あのねえ。言ったでしょう、おれはこの作品を清川に見せたんですよ。あいつの指紋がついてるのが当たり前で、ついてなかったらおかしい」
「まあまあそれはもちろんです。一応、一応貸していただけませんか。もちろん漏洩なんてさせません」
これを固辞するのは難しいだろう。
おれは渋々、紙束を刑事に渡した。
「もう一回言いますがね、確かにそこから清川の指紋は取れますよ。
でも、おれが使っている紙は清川のものと同じ(これはたまたま、本当にそうなのだ。清川のお勧めでおれが倣った)だし、文体だっておれたちは昔からそっくりなんだ。
清川を愛するヒトミが、これは清川くんのものですと言い張ったって、そりゃ通らないですからね」
「そんなことにはなりませんよ。ちなみに、清川さんはどんなふうにこれを読んでいました?」
「どんなって、ちゃぶ台に置いて、指でめくって読んでましたよ」
「変わった格好で読んだり、なにか特別なことは?」
「なかったですね」
そして、紙束は別の警察官に渡された。
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