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コハクの夢
天使がつくったエンジェルランドは、南の海に浮かぶ、美しい島だ。
エンジェルランドの真夏の空は、サファイアのように、青く透明に輝く。
夏休みになると、この島の子どもたちは、太陽が金色に輝く朝から、星々が空をうめつくす夜まで、海や森で、ずっと遊ぶのだ。
「行きたくない!」
コハクは、思わず叫び、フウッ、と溜め息をついた。
今日は、小学校の登校日だ。
(夏休みぐらい、もっと自由にさせてほしい)
コハクは枕を抱いて、ベッドで丸くなった。
すると部屋に〈マイヤー〉が入ってきて、
「チコクシマス、イソイデクダサイ」
ベッドからコハクをおいたてた。
マイヤーというのは、コハクのおじいちゃん〈エジポン博士〉がつくった人型ロボットで、コハクの身の回りの世話やボディガードをしてくれる万能ロボットだ。
ピンポーン、ピンポーン、チャイムが鳴る。
「もうこんな時間!」
コハクは鏡を覗き込む。きれいな二重の目をくりくり動かし、短かめの黒い髪を軽く整える。それからお気に入りの赤いワンピースを着て、二階の窓をばんと開けた。
ふわっと柔らかな風が部屋に入る。
「コハクちゃん、おはよう」
イーライが、にこやかに手を振り、澄んだ青い目で見上げる。
小柄で小麦色。何でもハキハキいう、おてんばなコハクと違い、イーライは細くて色が白く、おっとりタイプだ。自分でよく考え、言葉を選んで話すので、同じ五年生とは思えないほど大人びて見える。
「おはよう、すぐいくね」
コハクは慌てて四角いリュックを背負い、階段をかけ下りる。するといつものように、愛猫ダイアンがジャンプして、コハクのリュックに飛び乗った。
「わぁ、わぁ」
背中のダイアンがズッシリ重い。ここ数日、大好物のかつおの缶詰を、与えすぎたせいだろうか。
「ダイアン、太ったでしょ」
コハクは、ちらとダイアンを振り返る。
するとダイアンは、
「急ぐにゃ」
と、はぐらかし、ニタッと笑う。
「今日から、ダイエットよ」
コハクがピシャリという。
「ひどいにゃ」
ダイアンは、眉間に三本シワを寄せる。
コハクのお父さんとお母さんは、コハクが赤ちゃんの頃、飛行機事故で帰らぬ人になった。ダイアンは、天国の両親が、コハクにプレゼントした天使ネコだ。だから人間の言葉が話せるのだ。
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