天使のフィルター

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 コハクは、下がったリュックの肩ひもをグッとにぎりしめ、玄関を出た。 「おまたせ!」  外に出ると、コハクはイーライにぺこり、頭を下げた。すると、リュックにしがみついたダイアンの、小さな顔があらわれた。 「ダイアン、おはよう」  猫好きのイーライは大喜びし、ダイアンのあごを、指先でこちょこちょする。  ダイアンはうっとり心地よさそうに顎をのばす。  イーライは、コハクの家より小学校に近いけど、ダイアン見たさに、毎朝、早起きしてコハクを迎えに来るのだ。  イーライのダイアンいじりが続く。  その時、 「おはよう!」  黄色いTシャツと青い短パン。幼なじみのアルウが大きく手を振ってあらわれた。  アルウは、ひよろっとしているが、外で遊んでばかりで色黒だ。勉強が大嫌いだけど、大人になったら博士のような発明家になるのが夢だという。  ダイアンは、あごを伸ばして目を閉じている。イーライのマッサージがよほど気持ちいいのだろう。 「わぁ、ぼくもさわらせて」  アルウも指先で、ダイアンの襟首あたりの、濃い茶色の毛を優しくなでる。  二人がダイアンと遊んでいる間、コハクは腰をまげたかっこうで、息が苦しい。もう我慢の限界だ。 「あいさつは、そのへんでいいかしら」  コハクは顔を上げ、プハーと深呼吸した。  そのとき、コハクの後ろから、 「イーライ、アルウ、おはよう」  おじいちゃんが、ニコニコと手をふりながら、あらわれた。珍しく、白衣じゃなくて、ネクタイにダークブルーのスーツだ。 「おはようございます」  二人も、笑顔であいさつする。 「今日は、寄り道しないで、真っ直ぐ学校に行くんだよ」  おじいちゃんは、優しくコハクを見つめ、孫むすめの頭を、くしゃくしゃとなでた。 「ふぁーい」  コハクは、ふくれっ面になる。 (今日こそは、天使の神殿を発見しようと思ってたのに……)  今から一万年ほど前、この島にベルという天使が現れ、エンジェルランドをつくったという伝説が残っている。島の人たちは、ベルに感謝し、コーパル湖に、黄金の天使の神殿をつくったという。  コハクたち三人の夏休みの計画は、その天使の神殿を見つけることなのだ。 「研究所に行くの?」  コハクは、気持ちを切り替え、おじいちゃんを見上げる。
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