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「そうだよ。今日は大事なお仕事があるから、帰りが遅くなるとおもう。さびしいだろうけど晩ご飯は一人で食べてくれないか」
おじいちゃんはそう言ってコハクの頭をやさしくなでた。
「はーい」
コハクは、さびしげに返事した。
コハクのおじいちゃんは、毎日研究で忙しい、だけど、晩ご飯は必ず家に帰って、コハクと一緒に食べる。ところが、今日は帰りが遅くなるという。とても大切な発明の発表があるというのだ。
その時、家の前に白い車が着いた。車といっても宙を浮く、タイヤのないエア・カーだ。
ドアがカモメが羽を広げたように開き、運転席から助手のハイマンさんが顔を出した。
「おはようございます」
ハイマンさんは、手を上げ、エジポン博士とコハクに小さく頭を下げる。
「じゃ、先に行くよ」
おじいちゃんは車に乗り、コハクに笑顔を見せながら、大きく手をふった。
「行ってらっしゃーい!」
コハクも元気よく手をふる。
ドアが音もなく自動で閉まり、車はUFOのようにビュンと飛びさった。
エア・カーが見えなくなると、コハクはマイヤーを振り返り、
「お留守番、よろしく!」
と、玄関にダイアンを降ろそうとした。
するとダイアンは、
「おいらも一緒に行くにゃ」
リュックに爪を立て、降りようとしない。
「ダイアンはお留守番するの」
コハクはリュックを小さく揺さぶる。
「いやにゃ」
マイヤーと遊び飽きたダイアンは、毎日が退屈でしかたがないのだ。
コハクが困り果てていると、
「じゃ、あたしが連れて行ってあげるわ」
イーライが、優しくダイアンを抱きあげる。
「にゃっほー」
ダイアンは嬉しそうにイーライの手を、ペロペロと舐めた。
「もう、イーライちゃん、ダイアンを甘やかしちゃだめ」
コハクは腕を組んでダイアンを、じっと見たが、ダイアンはグルーミングして、知らんぷりだ。
去年、ダイアンが、まだ子ねこだった頃、コハクは、密かにダイアンを学校に連れて行ったことがる。ところがちょっと目を離したすきに、学校の飼育小屋に入って、うさぎ、百羽を全部逃がしてしまったのだ。しかもダイアンとうさぎの大運動会で学校中が大騒ぎ。
放課後、コハクは職員室によばれ、先生から、こっぴどく叱られたのだった。
「今日は、大人しくしてるのよ」
「わかってるにゃ」
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