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ダイアンは嬉しそうに目を細め、イーライの腕の中で、ゴロゴロとのどを鳴らした。
コハクの白いレンガ造りの家は、緑の絨毯が敷きつめられたような、小高い丘にある。庭先には糸杉が立ち並び、朝早くから、小鳥たちが、愛らしく、チッ、チッと鳴く。
丘の斜面の大部分は、ぶどうやオリーブの畑が遠くまで広がり、地平線の彼方には、青い海が見える。
家の前を通るでこぼこ道は、ふもとの村につながる一本道だ。ゆるやかなカーブを描くその道を、道なりにてくてく歩いていると、コハクたちの小学校に着く。
そして、おじいちゃんの研究所は、その村からエア・カーで、北へ三分ほど飛んだ、大きな街にあるのだ。
あれだけいやだった夏の登校日も、終わってみればあっけなかった。
(早く帰ろうっと!)
コハクは急いでリュックに荷物を入れた。
その時だった。
教室の大きなテレビ画面に、
「ニュース速報です。ニュース速報です」
大きなテロップが流れた。
帰りの準備でざわめく教室が、シンと静まりかえる。
「今から、天才発明家、エジポン博士の重大発表があります」
コハクをはじめ、クラスのみんなが、テレビ画面をくいいるようにみつめた。
「それでは、エジポン研究所から、発表のようすをお伝えします」
急にカメラが切りかわり、大きな画面に、エジポン博士とハイマンさんがうつった。
「コハクちゃんのおじいちゃんだ」
イーライとアルウが声をあげた。
クラスのみんなが、コハクに注目した。
コハクの頬が赤くそまる。
テレビ画面には、エジポン博士の、光る禿げ頭や、耳の生え際の白髪、だんご鼻、白いあごひげが、大きく映し出されている。
「ゴッホン」
エジポン博士は、重々しく咳をした。
会場がシンと静まりかえる。
「我々は、ついに愛の発明をしました」
博士の第一声に、つめかけた記者たちは、キョトンとした。
「博士、今、何といわれましたか?」
若い男性記者が聞き返す。
「愛の発明をしました」
「愛を発明したんですか?」
若い記者が博士をからかうようにいう。
せまい会場にドッと笑い声がうずまく。
エジポン博士は厳しい目で会場を見回し、
「わたしは『愛を発明した』と、ひとこともいってません。『愛の発明をした』といっているのです」
と、ピシャリといって、若い記者をきつく睨んだ。
再び会場が静まりかえる。
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