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所長の命令で、慌てて職員が、タブレット型の天使度メーター〈人間の魂の天使度を測る測定器〉のボタンをタッチした。
「これはどういうことだ……」
職員の声が震え、タブレットを握る両手が震える。
「どうした」
所長も、天使度メーターの画面を覗き込む。
「メーターの数字が百パーセントです!」
職員は、測定器をリセットして、天使度を測り直した。ところが、何回しても天使度が百パーセントを示すのだ。
「測定器が壊れているのか? 魔法か?」
所長や職員たちは、天使の魂になった人たちを前にして、呆然と立ちつくした。
「愛の発明です」
エジポン博士はにこやかに笑った。
「この刑務所の役目は終わりました」
所長は目頭に涙を浮かべ、
「今日は特別な日だ。国王から恩赦が出た。きみたちは自由だ。三年間の社会福祉ボランティアに参加しながら、新しい人生をスタートしたまえ。おめでとう!」
と、声を震わせながら宣言した。
その瞬間、ワアッと歓声が上がり、囚人たちはもちろんのこと、エジポン博士や職員たちも、涙を浮かべ、ハグしたり、肩を抱き合ったりして喜んだ。
その後、罪を犯して、施設に収容された人たちは、次々と天使フィルターをくぐり、王様の恩赦で罪を赦され、社会復帰していった。
もちろん、「罪をそんなに簡単に赦していいのか」という反発や抗議の声も、国民の間から上がったが、王様は、「人間は生まれながらの天使である。人を裁くのは神のみ。罪を赦すこともまた天使に近づく修行である」といって、惜しげもなく恩赦を出した。
この衝撃的なニュースは、世界中で大きく取り上げられ、エンジェルランドは天国に最も近い王国と賞賛された。そして、エジポン博士は地球平和賞の最有力候補者にノミネートされたのだった。
八月も終わりに近づいていた。やっと夏休み最後の登校日が終わる。
コハクは、ピンクの四角いリュックをコトコト揺らしながら、逃げるように教室を出た。
相変わらず、小学校では、天使フィルターの話題でもちっきりだったからだ。
「おじいちゃんのせいよ」
コハクは小さく呟き、廊下を駆ける。
エジポン博士が一躍有名になったので、コハクは博士の孫ということで、メディアの注目を浴び、毎日のように、見知らぬ人から声をかけられ、心が参っていたのだ。
「コハクちゃん、まって」
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