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彼の理想絵図
小さい頃から気に入ったものを集めるのが好きだった。
それこそ、石やら虫やら。そのうち流行りのカードゲームのカード、モンスターを集めるゲームもコンプリートは当たり前。
学業でも満点を集め、運動会では金メダルを集める。それが彼、街位りくにとっての普通。“あたりまえ”だった。
街位は勉強も運動もなんでもできた。自分の脳内で描いた絵図が形になるのはたまらない快感。大学も好きなことを勉強して社会にでた。
仕事も面白いくらい好調で、そんな毎日に暇を持て余した街位は動画でストリートダンスを踊っている若者を見る。
ーーこの動き、面白そうだ。自分にもできそう。
そんな単純な理由で街位はダンスに手を出した。
案の定、一人で踊るのは難なくできた。それならばと今度は複数人の掛け合いのダンスがしてみたくなる。
街位はストリートダンスを踊っているチームに声をかけて混ざるようになった。ストリートダンスはチームプレイが絶対の競技。それなのに、彼らは街位を除け者にした。
なぜならば、後から入ってきた街位が一番レベルが高かったからだ。ダンスを始めたばかりの男に抜かれたというプライドが歪んだ思考にさせたのだろう。
ーー話にならないな。
すぐに見限った街位は次の相手を探し始める。だが次もその次も、街位が求めるレベルの者は見つからない。
このままではせっかく面白くなってきたダンスがつまらないものになってしまうと街位は懸念して、行動にでた。
それは、理想のグループがないのなら、自ら創り上げればいいという思い切ったもの。
好きなことを貫くためにあらゆる手を回して、街位はメンバーを集めた。
「なあ、あんた。俺と一緒にチームを作らないか?」
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