道化

2/11
前へ
/11ページ
次へ
 友人に頼んでおれの動画を評価してもらったところ、実に容赦のない意見を言われてしまった。 「単純に、つまらない?」 つまらないと言われても、公開前に見ているおれとしては面白く感じている。何がつまらないのかを具体的に言って欲しい。それを友人に言ったところ、更に容赦のない意見の追撃が始まった。 「お前の顔のサムネがキモい。食欲も視聴意欲も失せる、油物ばっかり食べてるニキビ顔のサムネなんかクリックしたいか?」 これはおれの顔に対して長年言われ続けた評価だ。おれはこれを言われ慣れているために傷つくことはない。ただ、思うのは「人の悪口」を平然と言える友人に対して「お里が知れる」のみである。  友人は更なる問題点を述べた。 「無個性? お前の行ってる店は『他のグルメ系動画投稿者』も行ってるんだよ。お前のやってることは後追いだ。動画見る人って言うのはな、動画見るので忙しいコア層がいる。実際はリアルで忙しい中の暇潰しで見る層の方が多いけどな。そんな忙しい皆さんは零細動画投稿者の動画なんて見ないよ。グルメにせよ本にせよ家電にせよ、評価系の動画なら尚更な」 「で、でも…… 新商品の評価なら…… 朝イチで店入って棚に並んだ瞬間すぐに買って食べて食レポしてるし…… 他の奴らみたいに数日後とかにノンビリ動画公開してないし」 友人は絶対零度を思わせる冷たい目でおれを見つめた。そして、溜息混じりに述べた。 「これで評価が早いって評価してくれる人が出るまでは時間かかるぞ? 動画見てる人ってのはな、前々から評価されている人を評価するってもんだ。その評価がないお前の動画なんてたまたま目についたか、ミスクリックでしか見てもらえないぞ?」 おれは言葉を失ってしまった。直接は言われなかったが「お前は動画投稿者に向いてない」と言われたような気がしたのである。 それを裏付けるように、友人は引導を渡してきた。 「こんな惨状じゃ、動画収益なんて無理だ。最上位の動画投稿者みたいになるなんて夢みたいなことなんて言ってないで真面目に働くんだな」 そう言うと、友人は会社のパンフレットを差し出してきた。 「俺の会社だ。今、事務職足りないんだよ。人事に話通してやるから、考えといてくれないか」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加