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次なる目標は、モンブラン。
大抵は栗のクリームが載っているが、これは紫芋のモンブランだ。これもまた、鮮やかな色合いで、高貴な絹織物のような美しい出で立ちをしている。
栗が載っている箇所には、ホワイトチョコのプレートが載っていた。これも一旦、脇にどかしておく。
そしてフォークを手に取り、まずはモンブランを一刀両断する。小さなモンブランが、更に小さくなった。だが、様々な色が露わになった。
艶やかな紫色、生クリームの純白、ショコラを織り込んだチョコレート色の生地。コントラストのきいた、くっきりとした色合いも、やはりいいものだ。
我知らず、うんうんと悦に入った頷きをしてから、切り分けた片割れをぱくりと頬張る。
甘い……!
じんわりと、口の中が甘みに染められていく。
これもまた、紫芋が生み出す上品な甘みだ。口いっぱいが甘みで染め抜かれても何一つ苦にならない。
生クリームのシンプルな甘みも加われば、更に甘さは増す。だが、この甘みの大波なら、飲み込まれてもいい。純粋に、そう思えるのだった。
そこへショコラを練り込んだ生地が加わると、今度は大波を鎮めてくれる。荒波が、一気に凪いでいくように。
最初に半分に切っておいて良かった。この大きな波を、もう一度味わえるのだから。
次は残りの片割れと、避けておいたチョコプレートを一緒に口に放り込む。チョコレートのおかげで、また違う甘みが加わった。
「チョコレートの甘みも、いいものだな……」
ふいにそう思う。見ると、皿に取ったケーキは残り一つ。
ちょうどいい具合に、残っていた最後の一つは……ガトーショコラだ。
「では、いこうか……!」
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