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次なる目標に狙いを定め、一旦、フォークを置いた。
皿に取った品のうち、唯一、シートが敷いてあるもの。それは……フルーツタルトだ。他と同じく、一口サイズになっている。
小さくとも、タルト生地はちゃんと硬くサクサクしている。たっぷりのクリームと更にたっぷりのフルーツは、一つ一つ丁寧にデコレーションされていて、その彩り豊かな様に感嘆の息が零れそうだ。
他のものは大きく焼いて小さくカットしているんだろうが、これはもとから小さく作っている。手間がかかるだろうに……その手間暇をかけてくれたことに感謝の念を抱き、大胆に手で掴む。
4分の1程にカットされたのイチゴ、半分にカットしたマスカット、ブドウ……美しくコーティングされたそれらが並ぶ様は、まるで洗練されたジュエリーのようだった。
また、こんなに小さいのに、このボリューム……タルトではなくパフェなんじゃないのかと問いたくなる。
美しく、大胆。それを食べてしまうことには若干の罪悪感を覚えるが……これまで食べたケーキを思えば、何を今更、というところだろう。
私は意を決して、タルトを一息に頬張った。
「ああ……甘い、酸っぱい……!」
思わず声が漏れてしまった。
だが、本音だ。
甘みと酸味が交互にやってくる。だが決して、混ざり合うことはない。怒濤の如く押し寄せて次々に上から被さる波のように、その美味しさは互いに勝ろうと懸命に口内に広がる。
この、クリームの甘みと、果実の甘みが、私は好きだ。
どちらの方が、ということはない。両方、好きなのだ。だから、このタルトの交互に押し寄せる味の応酬が、たまらない。
だけどやはり、大きさには勝てない。
一口で食べたからには、それなりの短い時間で、終わってしまうのだ。
次に取りに行ったら、2つ……いや3つ取ってこよう。
「さて、次は……」
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