虹の二皿

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 カチャン――と、小瓶の中で音がした。小銭と小銭がぶつかりあう、少し鈍い音だ。  貯金箱代わりにしているその小瓶を手に取ると、ずっしりと重みを感じる。振ってみると、あまりガチャガチャ鳴らない。中身が詰まっている……つまりは、小銭が貯まった証拠だ。  ふとカレンダーに視線を向けると、大きな赤マルが目に入る。月に一度の、あの日(・・・)も、目前だ。  口の端が自然と上がって、もう一度、小瓶を振ってみる。ジャラッという重い音が耳に沁みた。  視線を動かすと、サイドボードに飾った写真立ての中で、亡き妻が微笑んでいた。 「今月も、行こうか」  そう、呟きかけると共に、スマートフォンを操作した。 「もしもし、次の日曜日、予約をしたいのですが……」
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