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一つだけ、ポケットの中に何か、残ってる。掴んで取り出せば、つるつるの丸い石だった。今までの石はごつごつして尖っていたのに。それに、これは拾い上げた記憶はない。
きっと最初からあったものだと思う。そっと指先で撫でてみれば、つるんっとした表面。紫色したアメジストみたいな石は、可愛くて、愛しくて、ついポケットにもう一度詰め込んだ。これを置いていくのは、なんだか惜しい気がしたから。
目を閉じてみれば、幸せな匂いが。幸せな過去が。どこまでも私を包み込んでいた。
<了>
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