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episode4. 照れ隠し
そうして日曜日を迎えた。
俺は約束のハチ公前へ向かう。
時間にはかなり余裕を持って来たため、ハルはまだ来ていなかった
暫くスマホに目を落としたり、周りを見回したりしながら、大人気もなくそわそわしていた。
すると前方から
「あっちゃん!」
と、ハルの声がした。
「あ……はる……」
思わず声が裏返る。
だって、今日のハルはいつもの何倍も可愛かった。
パステルカラーのゆったりとしたシャツを身にまとっていて、その柔らかな色合いは、どこか温かみを感じさせるものがあった。
ハルノ天使のような雰囲気を一層引き立てている。
シャツの下に合わせたスリムなジーンズは、脚をすっきりと見せつつも、カジュアルさを忘れない。
足元には、真っ白なスニーカーが軽やかに輝き、清潔感とシンプルなスタイルを完璧に仕上げていた。
その上に羽織ったデニムジャケットは、軽い質感でありながら、程よいアクセントを加えている。
髪は少しだけ無造作にセットされ、柔らかく風になびく。
耳には華やかで大人かわいい花のピアスもも付けていて、パステルな雰囲気とマッチしている。
それはもう、俺に洗練された印象を与えた
「あ……それ、似合ってるな」
思わずそんな言葉が口からこぼれる。
「え?そう?……ありがとっ!これ、新しく買ったの!あっちゃんにそう言ってもらえて嬉しいよ!」
そんなふうに言ってくれるものだから、またまた嬉しくなって舞い上がる。
「あ……あと今日はこの前のお詫びだから、スイーツぐらい奢ったる。」
「え?いいのに……あ!でもそれなら僕、行きたいとこあるんだけど!」
「お、おう。どこだよ?」
「えっとねー……」
ハルの希望で向かったのは、最近できたばかりのカフェだった。
店内に入ると、すぐに席に案内される。
メニュー表を見ると、どれも美味しそうで、ページの最初と最後を何度も往復する。
迷った結果、俺は無難にパンケーキとコーヒーを頼むことにした。
ハルはというと
「この季節限定のやつにする!あとこれとー、これにする!」
と、嬉しそうに注文しだす。
そんな様子を眺めていたら、顔が緩むのも時間の問題で、ついニヤけてしまう。
「あっちゃんは決まった?」
「ああ。俺はこのパンケーキにコーヒーだな」
それからしばらくして運ばれてきたパンケーキはめちゃくちゃ美味しかったし、何よりハルが満足そうでほっとする。
まあ、そういうこともあってか帰り際になると、俺は名残惜しい気持ちが込み上げてくるわけで。
ハルと一緒にいれるのが、今日だけだと思うと、寂しくて。
なにか口実…このさき、ハルと一緒にいられる方法なんてねえかな、と考える。
遊びに誘っていいのかもわかんねえし。
そんな俺の心中などつゆ知らず、 ハルは満足気に微笑んでお礼を言うと、タクシーを拾うので、そこで解散する他なかった。
帰宅後…
俺はベッドに体を沈ませてため息をつく。
……疲れた。
でも楽しかった。
ハルも楽しんでくれてたと思う。
俺ってこんなんだったっけ……。
いや、これが普通か? もう自分でもよくわからなくなってきた。
すると、スマホの着信音がなる。画面を見てみるとハルからだった。
ハルから?!と内心舞い上がりながらも、平常心を装って
「もしもし?」と出ると
「あ、あっちゃん?今大丈夫?」とハルの声。
「大丈夫だけど」と答えると、少し間を置いてからハルは話し始める。
「あのね、ちょっと親友のよしみで、お願いがあるんだけど…」
(く~~っ…親友…親友だってよ…!!…本当は恋人がいいけど、親友と言われるだけでもこんなに喜んでんのか俺……っ)
「なんだよ、お願いって」
「実は今度僕が高校の頃から推してるアニメキャラ、カニカニくんのコラボカフェが駅前近くでやるらしいんだ…!」
「あー…それって確か高校の頃お前がどハマりしてたやつだっけ?まあ、それで俺に着いてきて欲しいってこと?」
「うん、ひとりじゃ中々いけないし…あっちゃんがいればなにかと心強いかと思って!」
(聞きましたぁ?!可愛い!なにこいつ!頼ってくれんだよな、誘ってくれんだよなはあ好き!!)
「ま、暇だし別にいいけど」
「ほんと?!ありがとうあっちゃん!!それじゃあまたあとで日時とか送るね!」
「おう」
通話を終えると、俺はガッツポーズを取った。
「っしゃあああぁ!!!コラボカフェに感謝!これで自動的にハルと2人でデートができるじゃねぇか!!」
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