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私が恋した台湾って?
前世療法から台湾とのただならぬご縁を感じた私は、とにかくいつか台湾に行こうと強く思っていた。でもそれは“いつか”のことで、“今すぐに”ではなかった。今はまだ、台湾へ旅立つ勇気も資金もなかったから。
それでも恋心は募るばかり。
少しでも台湾のことを知りたいし、身近に感じていたいから毎月少しずつ1~2冊の“台湾に関する本”を買い求めた。語学の本、旅行ガイド、歴史の本、美味しいご飯の本、季節や伝統行事、暦の本、美しい景色の本、日用雑貨の本・・・ とにかく魅かれるままに買い求め、ちょっとずつ知り得ていった。
台湾は昔“もう一つの日本”だったこと。小さな島だけどたくさんの民族や文化が存在していること。たくさんの外国に翻弄されて来たこと。暑いけど寒さもやって来て、雨が多く春には桜が咲き、色彩が豊かで自然がいっぱいある。おばあちゃんの知恵や食養生、生薬が生活に息づく場所だということ。
そうして私の日常に台湾を感じる時間がわずかでもあり続けていることが嬉しかったし、日常を生きる支えや癒しになっていた。それはもう、気付かれないようにそっと近づくだけでいい、ただ見ているだけでいい10代のおぼろな恋のようだった。
そんなこんなで6年が経ち、私の手元にある台湾に関する本は40冊以上になっていた。恋のパワーってすごい。好きの力ってすごい。もはや6年越しの片想い。
この40冊以上に目を通した成果と云えば、大雑把な台湾の地名が地図上に置けそうなくらいイメージできるようになったこと。もともと地図を見るのは苦手ではなかったけど、ある地名が地図上で上の方とか、左の方とかいう感覚は、実際に現地に行った時に意外と役に立つ。自分が今いる場所からどっちの方角に目指す地名があるかをイメージできるからだ。街を歩くときにとっても役立つ。自分の現在地が分かるし、どっちに向かえばいいか分かるから。
数年前に初めて神戸に行った時、それを実感した。初めての一人での遠出で初めての地だったから、事前にガイドブックで地図を幾度も見て当日のルートなどをイメージしていた。だから大きく迷う事もなく目的地にたどり着けたし、次の目的地の目星も付いた。この恋する妄想が意外と役に立つのである。
そもそも妄想状態は、いわゆる潜在意識状態。何かに夢中になっている時と同じ状態だ。だから、この時に思い描き頭の中に地図化したものは残りやすいのだ。
そうして「よし。12月に出発。」と決めてからは、この40冊以上の中から“本当に行きたい所”をピックアップし始めた。
今までは漠然と眺めるように本を読み、「ここもいいなぁ。」「行ってみたいなぁ。」「食べてみたいなぁ。」と思っていた場所や物が、実際に目的地とするかどうか選択しなければならなくなったのだ。
台湾華語で云うところの“想”から“要”に変える作業だ。はっきりした意志を持ち現さなければ行くという行為に繋がらないのだ。
台北にも台中にも台南にも行ってみたい所はある。前世で居たかもしれないと感じる地は二つ、台北と台東にある。けれど、初めて行くのだしまずは一番気になる場所がある台北へ行こう。
台北には他にも気になる場所が集中しているし。ということでエリアを限定して実際に動ける範囲のプランを立てることに。
ここでも中学の時の地図旅行の宿題の経験が役に立つ。本当にあの宿題は、有意義で名作だったとこういうプラン立てをするときには毎回思う。と同時に感謝の気持ちにもなる。
今回の台北プランで訪れる場所の中には、私の前世に深く関わっていただろう場所を入れる。だってそれがこの旅の最重要な目的ともいえるのだから。そこで何かを想い出すのだろうか? 何かを感じるのだろうか?・・・と胸を弾ませながらプランの中に入れていく。
これまで写真でしか見た事がない場所なのに、とてもとても魅かれるとか、たぶんここに行ったことがあると既視感を覚える場所へ行かない訳にはいかない。
それから、今どきの面白そうな場所も外さずに。いわゆる観光名所も。歴史的な場所やその場所ならではの体験ができる場所も。夜市はもちろん、地元のスーパーやドラッグストア、日本から進出したメーカーのお店へも行きたい。限られた日程の中に好きと期待と魂の記憶の導きを詰め込んだ。
そうしてより具体的になって来て、「本当に行くんだわ。」と現実味が増すとわくわくする。と同時に“怖さ”が浮上してくる。私の“怖い怖い症候群”が顔を出す。
私は、初めての場所、初めての人、初めての出来事に踏み出すのが怖い。とにかく怖い。10年以上前は、初めての場所に一人で行かなければならないとなると前夜に眠れないくらい緊張し不安でいっぱいだった。
それでもここ数年は少し和らいで勇気や度胸が出て来たのか、前夜の緊張は眠れない程ではなく初めてに踏み出せるようになってきた。
なのに・・・ 初の海外はハードルが高いのか。恋してやまない台湾でもそこへ踏み出すことは、やっぱり怖い。これが私の本音だった。
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