12、あなたに花束を

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 ノック音がした。  開かれた隙間からルナが飛び込んでくる。ちゃんと全部開けてから、ガサガサと何やら大きな音を立てながらリクが入ってきた。 「あ、ルーラさん、きてたんだ」  ルナは何も持たずに部屋を飛ぶ。一方でリクは何やら大きな紙袋と……。 「ちょっとルナ、このカゴくらい持ってよー。魔法で持てるでしょ? あ、落ちた。ルナ拾って」 「もう」  ルナはリクの方に戻ってカゴから落ちた白い封筒らしきものを両手で拾い上げた。 「大切な預かりものなんだから、しっかり持ってよね」  リクが個室にあるローテーブルに置こうとするのでルーラが花瓶をよけてカゴが置かれた。その拍子で滑り落ちた封筒をルナが拾ってカゴに乗せる。 「リクくんたち……そのカゴの中身は?」  ふうと一息つき大きな紙袋を持ったままリクが答える。 「村のみんなから預かったお手紙です。ガリースへの感謝の手紙だって」 「……私への?」  カゴの中に入った手紙は一体何通あるだろう。こぼれ落ちるほど入っている。 「花束はもう飾りきれないほどありますって伝えたら、手紙を渡されたよ」 「みんなこれまでに書いていたけれど、渡すチャンスがなかったから、この機会にって」  目を丸くしたままカゴの中を見つめる。 「……こんなにたくさん……」 「宿から病院までの間で、たくさんの人に会って渡されて、持ちきれなくなっちゃった」  驚きを隠せないガリースの代わりにラフィーが嬉しそうに笑う。 「よかったわね、ガリース。……リクくんが持つその大きな袋も?」 「あっ、これはぼくたちとみんなからです」  リクが紙袋に手を入れ、ガリースに「よく見ててね」と呼びかける。三人の不思議そうな視線を集め、リクは微笑むと一気に紙袋から引き抜いた。  色とりどりの小さな鶴たちが、虹を描くように連なっている。その数はあまりにも多くてわからないくらいだ。一筋だけでなく何筋も集まって、まるで長く大きな滝のようだった。 「まあきれい!」「すごい!」  わっとラフィーとルーラから歓声が上がる。ガリースの方はキョトンとしていた。 「びっくりした? これは『千羽鶴』っていうんだよ。病気や怪我の人に『早く元気になって』っていう思いを込めてプレゼントするものだよ。ぼくの国ではそうするんだ」 「センバヅル……」 「そう。まあ、多分千羽以上いるよ。三日前の夜に思い立って色つきの紙で折り始めたんだけど、ぼくが一人で作ってたらルナと宿のおばさんおじさんもやりたいって言ってきて。教えたら作り始めて……そしたら村の人たちに伝わっていってね。色のついた紙でみんな折ってくれて、あっというまに千羽以上集まったよ。数えるの大変すぎてやめちゃった。ついさっき紐を通して、完成したんだ」  にこにこと嬉しそうにリクは笑う。 「千羽鶴って数が必要だから作るの大変なんだけど、みんなのおかげですぐ作れちゃった」
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