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大好きだったおじいちゃんが亡くなった。百歳まで生きるのだと言っていたのに、その日は十年も早く来てしまった。とても寂しいし、悲しかったが、おじいちゃんの安らかな顔を見たら、労いの気持ちの方が強くなった。おじいちゃんはずっと働き通しで、休んでいるところを見たことがなかったからだ。
街を見下ろす小高い丘の上に、白い三角屋根の小さな家が建っている。わたしのおじいちゃんが営んでいた、雑貨店だ。
おじいちゃんの雑貨店では、珍しい物をたくさん扱っていた。雨傘もその一つだ。定期的に雨が降るこの地方では、古来より雨をしのぐには頭からかぶる蓑が使われてきた。完全に雨を防げるわけでもないし、何よりすぐに臭くなる。子供の頃はそれが当たり前だと思っていたが、雨の日は憂鬱になったのを覚えている。
とある大雨の日、おじいちゃんは真っ赤な雨傘を広げ、街の大通りを颯爽と歩いてみせた。手に持つだけで雨を防ぐその姿は、何より格好良くて、街の人たちの注目を浴びた。雨傘が人気商品になるのに、それほど時間はかからなかった。
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