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03.
小野先輩が言ったように、ここは地道に一人でも部員を増やさなければいけない。そんな結論に落ち着いた。
倫太郎は翌日から、同じクラスの同級生たちに声をかける。
「突然で悪いけど頼みがあるんだよ」
倫太郎は同じクラスの平岩翔平に声をかける。翔平はどちらかと言えば「影の薄い生徒」だった。けど、最近はやっぱり同じクラスの下條慶太とよくなにかを話している。倫太郎にはよくわからないけど、宇宙人の出てくるSF小説の話で盛り上がるらしい。
「頼み?」
図書館から借り出した本を抱えていた翔平が聞き返す。
「演劇部に入ってほしいんだ」
「演劇部? 演劇部に入って人前で演技するの?
倫太郎がうなずくと、翔平は大きく首を振る。
「僕には無理だよ。人の前に立って演技するなんて」
それでも倫太郎は食い下がる。
「君は読書が好きだろう? だから、舞台とかにも興味があるんじゃないかなって思ったんだ。いや、別に主役になってずっと舞台に出っ放しとかそういうわけじゃなくって。ほら、演劇部には台本を書く人だって必要だしさ。裏方でも……」
「悪いけど、劇の台本なんて僕には無理だよ」
翔平はそう言って、図書館の方に歩いて行った。
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