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「ねぇ翔太、そういえば…」
ふと思い出したように美祈が声をかけると、カフェラテを飲んでいた翔太がこちらを向いた。
「何?」
「連休は一緒にいられないけどさ、また改めて一緒にどこか行こうよ。その時は私からも、ちゃんとお誘いするから。」
翔太は、少し驚いたように目を見開いてから、ふっと優しい笑顔を見せた。
「うん、楽しみにしてる。」
二人の笑顔が重なり合い、カフェの窓から差し込む午後の光がやさしく二人を包み込んでいた。
美祈はその時、自分の中に静かに広がっていく幸福感をしっかりと感じていた。誰かに与えられたものではなく、誰かに認められたからでもなく、ただ自分が選び、感じることのできる幸せ。それが本当に大切なことだと、今はわかっていた。
そしてまた、彼女の心の中でケルビンの声が聞こえた気がする。
「その調子。あとは君次第だよ。」
もう一度、心の中でありがとうと伝え、美祈はスマホをカバンにしまい込んだ。
これからも、彼女の歩む道は続いていく。誰かに引っ張られるのではなく、自分のペースで、一歩一歩、自分の足で――。
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