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宇宙船に二人が戻ってくると、Jはすぐに帰還の準備に入った。げっそり顔の二人がひとまず健康であるのを確認すると、彼らの恨めしそうな視線を無視して、カチャカチャと物を固定していく。
「おい、裏切り者。宇宙人の犬。俺は許さないからな。地球に帰ったらお前がしたことをリークしてやる」
「いいからさっさと帰るぞ」
Jはピシャリと言って、一足先にシートに収まった。二人を振り返る。
『アイツらの科学力を見ただろ? ゼットだけじゃない。ワープ、翻訳、通信機能のジャック。それに、研究への執念。あんなの敵に回して、地球が危なくなったらどうする?』
母国語でまくし立てると、一方の仲間がハッとした顔つきになった。
『では、君がゼットに目の色を変えたのは……』
『前回のクルーが早々に消息不明になったのは、恐らく、協力を断って船ごとアイツらに回収されたんだ。俺はずっと、「緊張」と「恐怖」で心臓が飛び出そうだったよ』
ボソリと答えて、Jはエンジンのスイッチを入れた。
***
三名の宇宙飛行士が無事に地上に帰ってきた。宇宙開発局の研究員達はただちに各種データの分析を進めた。だが、一ヶ月間の音声・画像データはほとんど残っておらず、宇宙ゴミの回収・地球への落下の作業についても様子が分からない。
「クルーに尋ねてもまともな答えが返ってこない。どうなってるんだ?」
頭を抱える研究員に、まあまあ、と同僚が言った。
「自分達のミスを隠蔽したいのだろう。プロジェクトの初回のメンバーもそうだった」
その推測が正しいことを示すように、モニターに表示された宇宙ゴミの濃度は、出発前のデータと比較してわずかにしか減っていなかった。
宇宙開発局は、宇宙船のアームの操作性やカメラの電子回路を改良し、宇宙ゴミ関連の作業のトレーニング時間を増やすことにした。
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