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君が言ったんだぞ・・・。
天使が揺られている。
ゆらゆら、ゆらゆら。
僕のせい、だ。
大病を患った僕の元に天使が現れたのは、三日前のこと。精神的に追い詰められて幻覚でも見たのかと思ったが、違った。天使の翼の手触りは例えようのない心地良さで、僕は本物だと確信した。天使に性別は無いらしく、男か、女か、わからない顔をしていたが、彼は、彼女は、これ以上ないほどに美しかった。
天使は言った。
「一つだけ、願いを叶えてあげましょう」
僕は、
「ずっと一緒に居てほしい」
と言った。
「それはできません」
と天使は答えた。
「嘘吐き!!」
僕は叫んで、
ああ、
なぜあんなことをしたのだろう。
僕は天使に襲い掛かり、
天使の翼を毟った。
「嘘吐き・・・」
天使は何故、死を目前にした僕の前に現れたのか?
天使は何故、ずっと一緒に居られなかったのか?
天使は何故、翼をもがれただけで絶望したのか?
なにもわからない。
なにもわからないまま、天使は首を吊って死んだ。
天使が揺れている。
僕はそれを座って見上げている。
ゆらゆら、ゆらゆら。
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