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「アンタ、まさか……」
リンガが恐る恐る言うと、立ちはだかった強面の男はシャリ、と剣を抜いた。
「貴様の得物をもらう」
「ああ、やっぱり『武器ハンター』なのか」
参ったなぁと思いつつ、リンガは自分の黒髪を軽くかき上げた。彼の若者らしいはつらつとした目には、対峙する男が暗く冷たい空気をまとっているように映った。
『武器ハンター』というのは通り名で、その正体は不明だ。冒険者、特に腕に覚えのある中級者の前に現れ、彼らを打ち負かしてその武器を奪うのだと、一年ほど前から噂になっていた。リンガも冒険者の一人として、遭遇したくないものだと願っていたのだが――。
人里離れた荒野の道に、乾いた風が吹いた。決闘には持って来いの雰囲気だが、そんなものあっても困る。
ハンターが剣を構えようとしたので、リンガは「待った待った」と手で押し止めた。
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