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「え、あ、父さ……じゃない、社長……どうし……」  これが、すべての始まり。 「うちで引き取るか」  この発言を受けて、驚かなかった人は一人もいないと思う。 「は? え、社長……?」 「は? じゃなくて本気だよ、嶺矢」 「ちょっ」  何か事情があってのことだとは思う。  でも、社長の一言を受けて、口角が上がりそうになってしまった。   「こっちは親御さんから、大切な息子さんをお預かりしてる身だからな」 「でも……」 「しっかり食べさせないとダメなんだって」  本当の息子に語りかけるときのように、社長は深刻そうな声を出しながらも表情には優しさが含まれていた。 「この業界で長くやっていきたいなら、尚更、体をしっかり作る。ちゃんと食べて、ちゃんと寝るっていう基本から整えていく。その手伝いをさせてほしい」  八木沢くんは黙り込んで、頭の中でいろんなことに思考を巡らせていた。  まだやれるっていう悔しい気持ちが彼の中に確かにあるからこそ、素直に言葉を返すことができないんだろなってことが伝わってくる。 「八木沢くん」  八木沢くんは親元を離れて、一人暮らしをしているって聞いてる。  父さんも言っていたけど、俺たちは八木沢くんが将来も俳優を続けていくための手伝いがしたいって気持ちを伝えるために一歩踏み出す。
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