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「もっと八木沢くんの芝居が見たい。俺たちファンを、もっともっと芝居で楽しませて」 「(しゅう)、でも……」  小学生の頃からの付き合いでもあり、子役の頃から芸能界で活躍している八木沢嶺矢くんと同居生活が始まるなんて嬉しい以外の何物でもない。 「ファンを楽しませるために、まだファンじゃない人たちを魅了するために、八木沢くんがやらなきゃいけないことは?」 「っ」  なぜなら俺は。  とっくの大昔に、テレビ画面の向こう側で活躍する八木沢嶺矢に惚れ込んだ。  それ以来、俺は俳優八木沢嶺矢の大ファンなのだから。 「俺たちを頼ってよ、八木沢くん」  八木沢くんはきっと、一人暮らしと仕事と学業の三つを両立させたい。  それを叶える力がない自分のことを責めているって分かっているからこそ、俺は何度だって優しい言葉を彼の元に届けたいって思う。 「週刊誌に騒がれることもあるかもしれない」 「わかってる! 社長のお気に入りとか、そういうことだよね!」  マネージャーの仲上さんは社長の決断が揺るがないと判断して、既に諦めた様子。  社長に抗議をしているのは、八木沢くんただ一人となった。 「八木沢嶺矢を、うちで面倒見るぞ」 「了解っ」 「あの!」  振り返ってみると、乗り気だったのは父と息子の二人だけだったかもしれない。
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