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「今日の体育って、ハードルだっけ?」 「今日は長距離。学校の周りを延々と走らせるやつ」 「うわっ、マジか」   自分には自分のコミュニティがあって、八木沢(やぎさわ)くんには八木沢くんのコミュニティがあるってことは理解している。  けど、少し遠ざかる距離に寂しさを抱いてしまうのは自分だけ。  そこに寂しさって感情が俺のことを誘いに現れる。 「(しゅう)」  黒板近くで、仲のいいクラスメイトと喋る八木沢(やぎさわ)くん。  俺はクラスメイトの築島(つきしま)たちと一台の机に集まりながらも、八木沢くんがクラスメイトとしての表情を見せてくれることが堪らなく嬉しくて顔がにやついている。 「柊、そのにやついた顔はやめろって」 「だって、クラスに、あの八木沢嶺矢(やぎさわみねや)がいるんだよ!?」 「男子校で良かったな。今頃、おまえ、女子の嫉妬心に駆られて八つ裂きにされてると思う」 「え!?」  その高身長を活かせば、バスケットボール部で大活躍が期待されること間違いないクラスメイトの築島(つきしま)に話しかけられる。  でも、築島は根っからのゲームオタクで、体育以外で運動することを極端に嫌っている帰宅部に属する。 「12年も、そのテンションを保ってるおまえが怖い」 「えー、築島もやろうって! 八木沢嶺矢ファンクラブ!」 「パパさんに頼んで。俺は無関係でよろしく」 「えー……」  俺と八木沢くんと築島は同じ小学校出身で、同じクラスに属してきた唯一の仲間。  築島は八木沢くんを呼び捨てにするほど仲がいいけど、俺は八木沢くんのことを小学生のときから『くん』付けのまま成長がない。
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