18人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかるよ、わかるよ! 人気急上昇中の俳優と一つ屋根の下だなんてね!」
八木沢嶺矢のファンと称しておきながら、八木沢くんとの関係は何も変わらないことを少しだけ心で嘆いていたときのことだった。
この世に存在するすべてのアニメを熟知している重度アニメオタクの梅里が話しかけてくれた。
「梅里なら、わかってくれると思ってた!」
「わかるよ、わかるっ! 柊の気持ちは、オタクの鏡として称賛されるはずだよ!」
「勝手にやっててくれ……」
俳優の八木沢嶺矢と一緒に暮らすにあたって、家族会議が開かれた。
社長の家で八木沢くんを預かっていることを隠すより、敢えて一緒に暮らしていることを公表した方が週刊誌的には旨味がない。
そんな話し合いが行われ、クラスメイトどころか全国的にも社長の家で俳優の八木沢嶺矢くんが暮らしていることは知られている。
「嶺矢くんのお弁当は、柊が作っているのかい?」
「夕飯は頑張って作ってるけど、朝は起きれない……」
夕飯の残り物や冷凍食品を活用しながら、翌日の昼に食べる弁当を準備するってこともやるにはやった。
けど、毎日続けていたら、体が保たないってことを母親に指摘されてしまった。
よって、八木沢くんのお昼ご飯を担当しているのは我が母君。
「好きな人と同居が始まったからって、柊は急に変われないってこと」
後ろの席に座って、地獄としか言いようのない英語の授業の予習を始めた築島。
予習に集中してくれればいいものの、彼は痛烈な言葉を投げかけてくる。
そして、その築島の言葉に返す言葉も浮かんでこないから情けない。
最初のコメントを投稿しよう!