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「八木沢くんは俳優さんだから、食べ過ぎて体重に影響が出ないように……」
「柊」
「ん?」
家に帰ってきたときは、疲れた表情を見せていた八木沢くん。
「いただきます」
でも、『いただきます』と声を発したときの、八木沢くんの笑顔に心が揺れる。
「……召し上がれ」
同居人の八木沢くんの食事姿を見て、俺が作った料理を美味しそうに食べてくれることに喜びを抱く。
たとえすべて俺が作った物でなくても、八木沢くんが箸を進めていく様子は俺の家で同居することに不快感を抱いていないってことが分かって嬉しい。
「うまっ」
「あっためただけだけどね」
同居人が嬉しい言葉をくれるのに、自分の顔はきっと残念そうなもの。
八木沢くんのためだけに料理を作ることが許されるのなら、もっと手をかけて自分の手で料理をしたい。
でも、化け物並みに脅威な数学と英語を前に、料理をするための時間が奪われていってしまう。
「授業、難しい?」
「え?」
「英語の勉強してたみたいだから」
「あー……英語が壊滅的で」
自分で用意したラーメンもどきだけど、醤油ラーメンのスープの香りがあまりにも良すぎて食欲をそそられてしまう。
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