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【1】(2)
「お邪魔します、差し入れでーす」
父親は小さな芸能事務所を経営している。
子役時代から世話になった事務所から、父さんの事務所に移籍してきたのが八木沢くん。
子役時代から培った経験を活かすことができた八木沢くんは、一気に父さんの事務所の稼ぎ頭へと成長した。
「お疲れ様、柊くん! ありがとう! すっごく助かっちゃう」
「いつも父が、お世話になってます」
小規模の事務所のため、社長室はないようなもの。
(あ、八木沢くんだ)
俺の父親兼社長とマネージャーの仲上さん、そして八木沢くんが険しい表情で向き合っているところを目撃した。
スタッフさんに挨拶をしながら、クラスメイトの八木沢くんにちらちらと視線を向ける。
(今日も推しは、かっこいい!)
幼い頃から子役として活躍していた八木沢くんが出演したドラマや映画は何度も見直し、同い年とは思えない大人びた演技力に心を奪われた。
こんなにも心に深く響く芝居ができる彼に、一般庶民の自分は一気に魅了されてしまった。
(もう十年以上は、推しやってるなー)
小さい頃から八木沢くんの推しをやってるってことは学校でも有名で、それをからかいのネタにされることもあったけど、もう周囲にからかわれるだけの時代は終わった。
俺は、誰もが認める八木沢嶺矢ファンへと昇格した。
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