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「どうしようかな……」 「だってですよ、社長! 今どきの子って食に関心がないらしくて、適当に済ませちゃうらしいですよ!」 「食事が嫌いならサプリメントもあるもんなー」 「社長!」  声が筒抜けになっている事務所の造りに物申したいところではあるけれど、それだけスタッフのみなさんや所属者が信頼されているということなのかもしれない。  この事務所に情報漏洩する奴はいないぞっていう、父の信頼あってこその事務所の造りなのかもしれない。 「ある程度年齢がいった大人ならともかく、成長期の子どもがサプリメント生活はダメですよ!」 「体が資本だもんな」 「その体が資本なのに、マンションで倒れてるとかありえないですから!」 「だよなー……」  事務所のスタッフさんたちと談笑しながらも、八木沢くんのことがどうしても気になった。 (八木沢くんが、倒れた!?)  いくら仕事が忙しいからって、学業が疎かにならないように事務所はきちんと配慮しているはず。 (でも、八木沢くん……休まないで毎日、学校来てる……)  どんなに事務所が配慮しても、心休まらない日々が続いていたのかもしれない。  八木沢くんファンでもあるけど、八木沢くんの同級生として彼の体調を気遣えなかったことを悔やんでいると、俺が視線を八木沢くんに向けたタイミングと社長(父親)が俺を見たタイミングが重なった。
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