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【1】
「はぁ」
中学の英語の授業は、まだなんとか付いていくことができた。
でも、高校に入学してからの英語の授業は恐ろしく難しくて溜め息が止まらない。
早く予習を終わらせて寝なきゃいけないっていうのに、さっきから教科書を捲る手が止まってしまう。
「っ、訳が分からない……」
自分の部屋で勉強すれば少しは集中できるかもしれないけど、同居人を一番に出迎えたい俺はリビングで勉強中。
(今日は、お夕飯いるのかな……)
同居人の夕飯事情を心配している自分を余所に、リビングでは母親が大画面のテレビで同居人が出演しているドラマ映像を観ているなんて狡すぎる。
「んんー」
誘惑に駆られないように、必死にテレビ画面から顔を背けながら体を伸ばす。
視界に入って来た時計が示す時刻は午後8時40分。
もうすぐで同居人が帰宅することを示すのがわかると、なぜかそわそわしてしまう自分は相当な重傷者。
「ただいま戻りました」
「あ、仲上く……」
「お疲れ様です! 仲上さんっ!」
マネージャーの仲上さんが、所属タレントの八木沢嶺矢を俺の家まで送り届けてくれた。
「お邪魔します……」
よそよそしい態度でリビングに入って来る同居人の八木沢くん。
マネージャーの仲上さんは八木沢くんを残して、ほかのタレントを送り届けるためにリビングから出て行った。
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