帰って来た転生者

Ⅰ

　殺風景な会議室を出て、最寄り駅から新宿駅へと移動した。休日の早朝にもかかわらず、駅構内は混雑していた。
　今日、東京ビッグサイトの愛称で親しまれる東京国際展示場で開催される予定の謎のイベントへ向かう参加者たちなのだろう。
　こんなに居るのか、予想はしていたが思ってた以上に大変そうだな。仕事は嫌いではないが、別に好きな訳でもない。日々のルーティーンを、ただこなしているだけ。誰であっても、生活を維持するための人生の消費は空虚(くうきょ)に感じるのではないだろうか。作業するなら楽にこしたことはない。
　有明へ向かう車両に乗車する。

　永らく、夏季・年末年始休暇期間中に行なわれているサブカルイベントは、すでに年中行事となっていたが、ここ最近は東京を中心として日本各地で目的不明の集会が同時多発的に行なわれるようになっていた。その中心地であるイベント施設において、年に一度行なわれる集会の規模は年々拡大しており、今では海外からの参加者まで集(つど)うまでに成長しているという。
　ところが集会の目的が皆目わからない。この、あまりにも謎の多い勢力の目的は何で、若者たちを惹きつけるどんな魅力があるというのか、彼らの集団に紛れ込み情報収集するのが今回、私の任務である。
　しかし、過去にも何度かイベントに潜入し、参加者にさりげなく話しかけ作成された報告書はあるのだが、彼らは一様にライトノベルなど創作系サブカルチャーの話をするばかりと報告されている。いったいどんな目的で、こんな大規模な集会を開いているのか、公安調査庁や警視庁公安部には、まったく掴めていない。