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一冊の本
それが元々の運命だったのか、それともあの時に出会った一冊によって変わってしまったのか?そのどちらなのかは分からないけれど、その日から私の人生は思わぬ好転を遂げたのである。
とは言っても、それはありきたりのごく普通の人生。それでも私にとっては、「まさかこの私がそんな人並みの人生を歩めるなんて」そんな思いであった。
幼い頃から私はいつも独りぼっち。
一番の友達は?と聞かれたら「本」と答えていた程で、成人になるまでの間に同年代の子と遊んだ回数は両手で足りる程であった。
だからと言って決して人嫌いな訳では無く、話しかけれられただけで嬉しさのあまり顔は赤くなってしまうし、稀に遊びに誘われた時などは胸躍る気持ちを抑えるのが大変なくらいのむしろ誰よりも人好なタイプであった。
なのに、そんな僅かに巡って来た機会も私は上手く熟すことが出来ず、結局は仲良くなるまでの過程にすらも踏み込むが出来ず仕舞い。
直ぐに疎遠になって元の独りぼっちと言う、我ながら可哀そうな顛末。
そんなコミュニケーション能力に著しい欠如がある私にも、大学3年の春のある休日に転機が訪れたのである。
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