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黒い羽の生えた人々
「黒い羽根族の少女」
◆黒い羽の生えた人々
その村では、男女とも黒いローブのような服を身に纏っていた。大人から子供までそれは同じだった。
同じなのはそれだけではない。皆の背には大きな二枚の羽が生えていた。
大きな羽もあれば小さな羽もある。閉じている羽もあれば、だらしなく開きかけている羽もある。
共通して言えるのは、その色が黒一色であることだ。
羽は生まれつき生えてはいない。成長する過程で生えてくるのだ。生える年齢は、十三歳から十五歳。つまり思春期だ。
羽と言っても、鳥のように空を飛べるような羽ではない。ただ生えているだけだ。
だが、村の人にとってそれは重要なことだ。
羽は、その人の顔であり、ステータスのようなものだ。
あれば邪魔なものだが、無ければ、その人の人生に大きく影響してくる。
つまり、差別だ。
酷い迫害を受けることになる。
羽のない人間は縁起の悪い人間として、遠ざけられたり、無い者として扱われた。
故に15歳を過ぎても、羽が生えて来なければ、その人間にとって致命的となる。
まず、人の目に触れる所には行けない。当然、買い物にも行くことも出来ないし、学校にも行けない。もちろん友だちなんてできるはずもない。
だが中には遅く羽が生えてくる人間もいる。
そんな人間は差別や迫害を受けた経験があるので、他者に対して思いやりのある優しい人になる。と言っても、それまではかなり辛い時間を過ごさなければならない。
この物語の主人公の少女ピノもその一人だ。
ピノは、思春期を迎えても一向に羽が生えてこなかった。
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