探してたもの

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継母(はは)を殺したいと思ったのは、8歳の頃だ。 理由は、継母の誕生日プレゼントに必死で貯めたお小遣いで買った花束をゴミ箱に捨てられたから。 継母に似合うと思って選んだ花々を見て、あの人はこう言った。 「いらない。私はね、あんたと仲良くする気はないのよ。私はね、あんたのお父さんを愛してるだけ。こんなもので、母親の愛がもらえると思ったら大間違いよ」 あの人にとって、私の母を演じるのは父に愛される為のパフォーマンスだと知った。 あれから何年も私は、継母を殺したいと思っている。 だけど……今もまだ実行出来ずにいた。 「今日は、ゆっくり帰ってきてね」 今年に入ってすぐに弟が産まれた。 夏休みに入るとすぐに、あの人は私にゆっくり帰ってきてというようになったのだ。 ゆっくりと言われても、私には行ける場所などない。 そんな私が見つけたのが、古民家の一部でやっている図書館だった。 ここの住人の成瀬さんは、絵本から洋書まで様々な本を持っていて、自分のコレクションを読んで欲しいと思いこの図書館を始めたのだと言う 幼少期から、集めた本は、全部で3000冊。 中には、表紙がボロボロのものもある。 私は、そのボロボロの本を読むのが大好きだった。 「今日は、それを読んでるの?」 「うん」 「栞ちゃんは、いい子だね。これ飲んで」 「ありがとう。この本はね。意地悪な姉が足を切られちゃうんだよ」 「知ってるわ、私も殺してやりたいぐらい大嫌いな人がいたから、擦り切れるくらい読んだもの」 成瀬さんの言葉にハッっとする。 私が、このボロボロの本に運命を感じたのはそういう事だったんだ。 「栞ちゃんにだけ、特別にこれをあげる」 成瀬さんが差し出してきた本は、まさに私が探していた運命の一冊だ。 【黒魔術のやり方】 「次は、栞ちゃんの願いが叶うといいね」 成瀬さんは、ニコニコ笑いながら、別のお客さんの元に行った。
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