1  そんなのわたしのせいじゃない

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1  そんなのわたしのせいじゃない

世の中は謎だ。謎だらけだ。 わたしは平凡な平民の女の子に生まれた。たしか前世も平凡な平民だった。まあ前世じゃ貴族階級なんて外国にしかなかったから、言ってみれば国民みな平民ってことだ。だがここは違う。 さまざまな階級があった。王族貴族はもちろん、士族や聖職者など上位階級があり、その下に平民や農民、さらにその下に奴隷階級まであった。つまり、前世で言う中世社会というわけだ。言うなれば人権における暗黒時代なんだ。 そんななかでわたしは生まれた。平民の、エイミリアル(エイミー)・バレンスタインとして。平民のくせにバレンスタインという貴族みたいな姓だが、ご先祖様が勝手にそうつけちゃったんだからわたしのせいじゃない。なぜそんな御大層な姓にしたか?それは謎だ。世のなか、わからないことがあればすべて謎にしてしまえばいい。それこそわが平民バレンスタイン家の家訓だ。 「バレンスタインさま?エイミリアル・バレンスタインさまはどちらに?」 講堂でそう大きな声で呼ばれた。きょうはめでたい入校日。わたしエイミー十歳の、ファラレリアス王国初等学校入学の日である。
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