やはり入学イベントは外せないらしい

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「なんでもヴィルギンス家の伝統、いえ血筋とも言えそうですが、成人するまでは自分たちで相手を見つけても良かったそうなのです」 「それはまた……。珍しいと言うより、貴族らしからぬ考えだね。恋愛結婚かぁ…。私たち王族とは縁がなさそうだ」 「……しかしエリック殿下が…」 「それ以上言うな、レイ。ほぼ確定だろうが、実際に行動に起こさなければ王家は白と言わざるを得ない。ルイの情報を精査して、早めに陛下に諌めて貰うよう具申するしかない」 「ハッ、申し訳ありません」 レイの言葉を遮って、疑惑のうちからいらぬ事を口走るなと釘を刺す。 あのヴィルギンスの二人も悩みの種だが、現状王族としてはエリックの方に注視しておかなければならない。 (なんだって私がこんな事を…)、という愚痴をグッと堪えて話を戻す。 「でもそうか、恋愛事情には疎いと。なんだかようやく親近感が湧いたな。忌み子の彼は……まぁ仕方ないとしても、兄の方はどうなんだ?事前調査では性格に難があるわけではないらしいが?」 「令嬢たちの噂では忌み子の存在がネックとの事でしたが、どうやら兄の方には意中の相手がいるらしいのです。ですが、相手の家格が高く身分差があり、叶わぬ恋の傷が癒え切っていないとか」 「ん~いじらしいねぇ。悲恋だったのは残念だが人並みの青春を謳歌しているようで安心したよ。しかし辺境伯もそれなりに家格が高い筈だが…。相手は侯爵以上という事かい?」 「なんでも、懸想している相手はミリーゼ嬢だとか」 「ぶっ!?なんでよりにもよってアセンス家なんだ!?おいレイ!!これ以上爆弾は無かったんじゃないのか!?」 落ち着いて水を飲んでいたリオンだったが、飛び込んできた名前にはしたなくも噴き出してしまう。 「落ち着いてください。胸の内に秘めているというだけで、何も行動に起こそうとしているわけではないのです」 「しかし、エリックが―!?」 「殿下。先ほど自分で仰った通り、まだ確定的だとしても事実ではないのです。ただ辺境伯の息子が公爵家の娘に懸想しているだけ。何事も無ければその公爵家の娘は第一王子と結婚し、辺境伯の息子は思いを伝えず胸の内に留めるだけの悲恋ですみます」 「ぐっ……。あぁそうだ、確かにそうだな…。本当、何事も無ければそうなるとも」 先ほど自分で言った言葉が返って来たことを認め、上がりかけた腰を下ろす。 しかし額に手を当てて項垂れると大きなため息を吐き出した。 「確か今、王都で話題の劇があったな…?もとは本だったが、貴族令嬢たちに大層受けが良くてとうとう劇になったと聞いている。確か題名は―――」 「『真実の愛』でしたね。ルイも愛読しており、私もあらましは聞いたことがありますが……。まぁ、夢見がちな令嬢たちには刺さる内容かと。現在の婚姻では、家の都合上思いが通じた相手と結ばれるケースの方が稀ですから」 「…………あれ、確か女性が主人公だったよな?それで、結局は意地悪な伯爵令嬢から婚約相手の公爵令息を寝取る内容だと憶えがあるが…」 「言葉が悪いですよ、殿下。伯爵令嬢に虐められていた主人公が侯爵令息と出会い、なんだかんだ絆を育んで、なんだかんだ理由を付けて令息の婚約相手である伯爵令嬢に婚約破棄を申し渡し、晴れて主人公と令息が結婚してめでたしめでたし、という内容だったかと」 「…軽々に婚約破棄が出来るかと昔の私なら一笑に付していたが、なんだか最近の状況を見ていると―――」 「考えすぎです、殿下。そうならない様、陛下に報告して諌めて貰うのでしょう?」 「……そうだな…。そうであって欲しいが…」 レイに励まされる程思い詰めるリオンだったが、思考を一旦切り替えてもう一度大きくため息を吐き出す。 「これに比べたら、まだヴィルギンスの二人の方が大人しい。特に忌み子の――いや、ルドガーの方はこれだけ蔑まれても周りに跳ね返すでもなく、淡々と受け入れているのだからな。むしろ心配なのは兄を含めたヴィルギンス家の人間か」 「今日見た二人の実力が領内で平均的なそれだとしたら…。もしヴィルギンス家が領地軍を動かした場合、騎士団と国軍で果たして止められるかどうか……」 「何が何でもヴィルギンス家を怒らせない様にしなければな…。そのためにはなるべく早く二人と友好関係を築く必要がある。明日から早速行動を起こすぞ」 「ハッ」 「あと、聞けば強さを求めるのに貪欲と聞く。であるなら、お前たちを通して騎士団と繋いでみるのも悪くない。多少なりとも恩義を感じさせたいところだ」 「……可能でしょうか?」 「もし無理ならお前たち二人が、ルドガーが満足するまで鍛錬に付き合う事になるぞ?」 「えっ…!?」 「では今日はもう寝るとしよう。レイも報告ご苦労だった」 「あ、あの、殿下?先ほどのはどういう――」 「ではお休み」 「殿下!?」
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