一族の特徴

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 我が一族は遺伝的に、あらゆる感覚が鋭敏である。例えば目。視力に問題はないが、毎日容赦なくかんかんと照り付ける太陽の眩しさに弱いのだ。  日中、出かける際には真っ黒なサングラスが欠かせない。室内にてサングラスを外せばアーモンドのような形の切れ長の目が(あら)わになる。   ヨーロッパではこのアーモンドアイが「異国情緒をかき立てる」として、一部の者たちの目には(たま)らなく魅力的に映るらしい。  もし彼らが我が一族の者との婚姻を望むなら、彼らは自分の神を捨て去り、我らが夫婦(めおと)(しん)だけを崇拝する事を誓わねばならぬ。  口髭に黒眼鏡。人相が悪く見えがちだが、これも宿命(さだめ)と受け入れている。  こんな風体(ふうてい)でも仕事の腕は確かなので、サングラスや口髭を理由に仕事を解雇された者は一人もいない。  この事実も口髭と共に我が一族の誇りである。  聴覚も鋭敏で、「地平線上のラクダのくしゃみが聞こえる」という言い回しがあるほどだ。眠る際にはもちろん、耳栓必須である。
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