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目の前を映像が流れていく。ああ、これが走馬灯か……
小学生のときに、通知表に書かれた。
「蒼太くんは少し、周りの意見に左右されやすいところがあります」
――違うよ、空気を読んでるだけだよ。
中学生のとき、友人に言われた。
「蒼太、そのジュースあんま好きじゃないって言ってなかった? なんで買ったのさ」
――いやあ、みんな同じのを飲んでるからさ。
高校生のとき、初カノとのデートで言われた。
「あの映画を観る予定で来たのにー。どうしていまさら悩むのよ」
――だって、ネットの評価が2.6だよ? 3.2のこっちの方が、いいじゃないか。
そして最近のぼくが、スマホでひたすら検索している。評価の高いマッチングアプリはどれか。アプリ上ではどのように振る舞うべきか。最初のデートの約束を取り付けるには? デートに着ていく服装は? 次のデートの行き先は? 相手から連絡が来なくなったらどうすればいい?
…………。
なんだ。結局ぼくだって、誰かの意見を鵜呑みにしながら生きているんじゃないか。
発信元が怪しい占い師か、ネットの匿名の情報通なのか、それだけの違いでしかない。なのにぼくは、佳乃さんに対してずいぶん偉そうなことを言ったものだ。カツ世から卒業させてあげるだなんて、息まいていたくせに……。
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