006謎の試験

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006謎の試験

「ちょっといいですか、そこの男。名はラウル!!」 「え!? 何?」  いつもどおりの冒険者ギルドに来て依頼を探していたら、冒険者ギルドにいる魔法使いは皆お城に呼ばれた。そうして訳も分からずに自分が使える最大の魔法を使ってくださいと言われた、俺が使える最大の魔法とは何だろうか、台風でも作り出すことだろうかとふと思った。 「広い水面を用意して水蒸気を大量に作り、上昇気流を作って水蒸気が反時計回りに渦を巻きながら上空に昇っていくようにする、そして積乱雲に成長し渦を大きくしていけば完成だ!!」  俺はできないことでもないなーと台風作成について思いをはせた、だがそんなことはもちろんやってはいけない、この場合水の魔法使いとしての多分だが最高の力を出せということだ。俺はどのくらい手加減していいか迷って、氷の精霊に力を借りてなるべく小さくでも無力でもないとアピールした。 「”氷の槍・三連”」 「ふむ、可能性有」  俺の生み出した氷の槍は目的物がなかったので、三角形に地面に落ちるようにした。かなり手加減したつもりだったが、可能性有りと言われてしまった。一体俺に何の可能性があるのか心配になりながら、次の控室のドアを開けていろんな人間が集められてるのを見た。そうしたら薄い金色の髪に蒼い瞳の十三歳くらいの女の子が、俺のことをそのちっちゃい足で蹴ってきた、これが男なら半殺しにしてもいいが相手は子どもだったので大目に見た。俺の他にも近くの三人に文句を言っていた、平民嫌いのお嬢様というやつだった。 「ちょっとおどきなさい、平民ごときが!?」 「ええーっ、無茶を言うなよ。人が多すぎて動けないよ」 「私はエルフィール・モネ―タ・ヴァイトシャフト。ヴァイトシャフト公爵家の公爵令嬢よ!!」 「いや、君の名前がなんでも人が多過ぎるんだって、ここ」 「仕方ないわね、ふん!!」 「やれやれ」  一体この集められた魔法使いの山は何なのだろうか、隣国への戦争? そうなったら一目散にローラを連れて逃げなくてはならなかった。そうして今度は水の魔法使いだけが呼び出された、そうしてできる限りの氷の槍を作ってみろと言われた。俺は手加減して、三本しか氷の槍は作らなかった。他の皆も似たり寄ったりだったが、一人だけさっき俺を蹴った女の子は違った。 「氷の槍・三十連」  その子だけが三十本もの氷の槍を生み出した、ちなみに俺は五十本でもいけるがとちょっと対抗心をもってしまった。最終的にその子が選ばれて俺たちは街に帰された。 「な~んか気になるなぁ」  俺はちょっとこの呼び出しが気になって黒いローブに目元だけ仮面をつけて、闇にとけて城の中を探りはじめた。ジェフが美味そうな料理を作っていたリ、メイドの着替え室に出てしまったりしたが、さすが闇の精霊だ。俺達は気配を残さずに俺は城の中を歩いていた、するとさっきのくそ生意気なエルフィールとかいう幼女を見つけたので、その隙を見てその影にもぐり後をついていった。やがて俺たち大きな会議室のようなところに呼び出された、エルフィールはふんっとちっちゃい胸を張っていた。やがてこの会議の議長のような男性が話し始めた。 「それではこれから七種の魔法使いに対応すべく、七種それぞれの魔法に長けた魔法使いを選んだ。これからお互いに協力して、七種の魔法使いをも上回る七人の魔法部隊を作るつもりだ!!」  俺はそれを聞いた時、軍隊って考えることが単純で馬鹿じゃないだろうかと思った。結論を言おう七種の魔法使いと、それぞれの魔法に長けた七人の魔法部隊、それらがぶつかった時に勝利するのは七種の魔法使いだ。俺は隠れている闇の中でため息をついて呟いた。 「そんなこともわかんないのかね、お偉いさんは」  その理由は一人で七種の精霊を操るから、精霊同士の連携が半端じゃなく良いのだ。それぞれの精霊を持つ七人の人間に分かれていては、よほど仲良くなっても連携はそう簡単じゃない。例えば水の精霊を持つ魔法使いだけだったら作った氷の槍を敵にぶつけるか、上から落とすかしかできないが、ところが水と風を操る魔法使いだったら、氷の槍を風の力で思い通りに操って敵を狙うことができるのだ。だから七種の魔法使いは貴重なのだ、精霊同士の連携がうまくできるから台風なんてものもつくることができるのだ。 「何か良い依頼ないかなー?」  俺は話しを聞いているのが馬鹿らしくなって、闇を使って移動し冒険者ギルドの一室に戻ってきた。誰も使っていなくて幸いだった、変装セットを外して俺は冒険者達にまぎれていった。でも例の試験で時間を使わされたので、依頼を受ける時間も無かった。俺は今日依頼を受けることは諦めてトボトボと我が家に帰った。ローラが顔色が悪いと心配してくれた、そして俺はローラにお茶を入れてもらって、今日あったことの全てを話した。 「七種の魔法使いなんてもう死んだことになってるのに、そんなに対抗手段が欲しいのかな」 「それがですね、レオパール王国の第三王子は死んでいないこと、になっているみたいなんです」 「えっ!? それじゃ、俺は何? 幽霊?」 「七種の魔法使いが死んだとなったら対外交的に悪いですから、火傷を負ったが生きているという話になっているようです」 「へえー、そうか。それで七種の魔法使い対策に七人の魔法使いを集めたわけだ、でも俺はもう死んでるから何にもできないわけだけど」 「実際に戦争になったら、レオパール王国の方が小国ですから不利でしょうね」  うーん、俺がいなくなったから故郷の国が滅びました。って最高に後味が悪いな全くもう、だからと言ってもう第三王子には戻りたくなかった。あとは一平民の俺にはどうしようもできないな、いや待てこれはもしかしたら稼ぎ時かもしれなかった。変装をして七種の魔法使いとして現れたらどうだろうか、そしてお礼次第では戦争を手伝ってやるというのだ。きっと金貨が何千枚も稼げるはずだ。 「くっ、くっ、くっ、いや~、楽しみだ」 「その顔は何か悪い事を考えてますね」 「いやちょっと七種の魔法使いの出張で出稼ぎでもはじめようかと」 「はぁ~、……ちょっと呆れました。戦争を理由にお金儲けをするんですか?」 「駄目かな、良いアイディアだと思ったんだけど」 「それをやるのなら、絶対にご両親やご兄妹にバレてはいけませんよ」  確かに下手に戦争に加担して、両親や兄妹たちに正体がバレてしまったら、ローラと逃げ出したことが台無しだ。俺はどうしたものかと考え始めた、両親や兄妹たちは俺を覚えているだろうから、ちょっとした所作でも気がつかれてしまう可能性があった。俺は散々考えたすえに、ローラにこの戦争に関わるのは止めておくと言った、ローラは優しく笑ってくれてそれがいいですと言ってくれた。その翌日のことだった。 「さてと今日の依頼はと……」  俺はいつものように冒険者ギルドに仕事を探しに来ていた、するとドアが開いて幼女を先頭に私兵らしき奴らが入ってきた。エルフィールといったか幼女は、俺と他にも数人の魔法使いを縛り上げて連れ去った。そうして攫われた俺達は四人は貴族の館の中にある牢屋に入れられた、理由を聞いても誰も応えてくれなかった。俺は今夜は帰れないかもしれないと思い、事情を書いたメモを闇を通じてローラが住む家に届けて貰った。そして、エルフィールとかいうくそガキが牢屋の前で言い放った。 「私は無礼者は許さないの、貴方たちには死んでもらうわ」
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