1、絶対

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「この銀河にも、コリオリ力にも、波の音にも、ハチの巣にも規則性がある。  よく耳を澄ませると、数の波の囁きがあるの」  彼は何かを噛み砕くように、理解に努めているように見える。  私は尚も続ける。 「例えば、ある天才が発見した宇宙の調和をそこに見るの」 「例えば? どんなだよ? 」  そう苦笑いをしながらも、話を聞いてくれる。 「数字が1から10まであるとして考えて?  倍数がプラスのように積みあがりどんなにバランスが乱れても、3・6・9がそのでっぱりを調整・緩和してそのバランスを元に戻す役割を果たす」  「9は全てでありながら無にもするものなの。  そこに完璧なる宇宙の調和を見るの」  怜司は、興味をひかれるような話ではあるのだろうが、自分の理解の範疇を超えている話に困惑気味のような表情をしている。   「壮大な話だ。  凡人の俺にはそんなこと言われてもよくわからない。  けれど、もんな大層なものを感じると生きにくくないか?」  そう雰囲気を和やかにするように笑いかけてくる。 「ううん、もっとこの謎を追いかけたくなるの」 「けれど、あまりにもこの世界に入ると周りとは浮いてしまうの」  それを聞くなり、彼の端正な眉が眉毛が斜めに下がる。  すると、途端に困り顔が出来る。   「まぁ普通に変わり者になるだろうな。正直、それを理解できるものがいないだろうな」  私は、その言葉を静かに受け入れると、窓から空と海の境を見つめる。 「そう。ずっと孤独だった。  どこに行っても誰と話していても、遠い衛星から話をしているような感じ。  その内、誰かと話す事も、数字の波をとおして未来を説明する事もやめてしまった」 「けれど、あまりにも鮮烈なこの波の囁きや地球の鼓動を聞いて宇宙の調和の一体になってみたいの」  それを聞くなり、 「それであんたの孤独が和らぐのか? 」 そう鋭い質問が飛んできた。 「分からない。でもこの自然の法則で構成された世界なら本当の私を受け入れてくれるかもしれないから」  その理由を聞くなり、彼は考え込んでしまった。  きっと彼は私が水槽や魚を見ていた本当の気持ちを察したのかもしれない。 「茉莉花、その目に見えない力が俺たちを引き合わせたのかも知れないな? 」   「人の心を読み取る俺と、宇宙の規則性を読み取るあんただ。  なんらかの法則で引きあったとしても不思議じゃない」  そう聞くと、なんだか心にゆっくりと希望のような星の瞬きが舞い込んだ。  この高揚感と高まる心拍数にはどんな規則性があるのだろう。  1分間に波が押し寄せる数は18回。  これは人間の1分間の呼吸数と同じ。  1と8は9。  9の倍数の72回。  人間の一分間のだいたいの鼓動の回数。  平均より少し早い心拍数が私に訪れた希望を告げている。  全てに繋がり、全てのキーを握る№9。  きっと、彼はこのままなんとかこの世界の引力に私を繋ぎとめる様に現れたのだろう。  彼と出会いと引き寄せ合った理由が、なにかの法則には隠れているはずだ。  
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