2,相対

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2,相対

茉莉花は、退屈な学校に登校している。  島には高校は二校しかない。  農業高校か、はたまた島の中にしてはそこそこの偏差値を誇る高校か。  薄灰色の汚れた壁にはめられた、外と繋がる空想への鍵と現実との曖昧な境界線という窓を見ている。  ぼんやりと眺めながら、昨日の大胆な自分を思い出す。  とても刺激的な出会いだった。  まるで自分の運命が動き出したような。  全ての始まりを意味する一日だった。  なのに、その翌日にはこの退屈な島の高校で、あいも変わらず耳にカビの生えそうな授業が展開されている。  小さな男性教師が背伸びしながら、黒板に達筆な文字をつらつらと書いている。  私は面倒くさくてノートは必要な部分しか書き写すことは無い。  教科書を読みながら、急に振り返り、 「この古語の意味を答えてみろ、棚橋」 と言うと、野球部の棚橋は朝練の疲れから眠りこくっていたにもかかわらず、条件反射のように立ち上がる。 「はい、分かりません」 「棚橋、お前は先生と毎度一度はこのやり取りを確かめあわんと気が済まないんだな? 」  変わらず繰り返される平凡な日常。 「次、三島、代わりに答えてみろ」  無難に回答をしておく。  私は実は数学以外にも古語にも興味がある。  日本に伝わる一説には空海が作ったとも言われる「いろは歌』。  最近は、授業中にこれの解読に勤しんでいる。  これは、複雑な暗号になっている気がする。  『いろは歌』を分解して並び替えてゆく。  一つ一つ古語に直して辞書で単語を拾ってゆく。  ならんでくる古語単語などを辞書をひき現代文に訳しノートにとっていく。  そうすると、浮かび上がる現代文たち。  数個を拾い上げる。    あなたはだれ  夜が明けた頃  手紙の末尾  山(山車または神の御神体?)  身・口・意の働き  声(神の?)  夜が明けてしばらく経つ頃  絶対に分かる  はい  薄紫の女性の30センチの服(高貴な身分の女性? )  これは内容が、『かごめかごめ』にも似ている気がするな……。  きっとなにか面白いパターンが隠されているに違いない。  そんなことを考えていると、授業は終わっていたようだ。
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