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「どうしてそんなことがわかるのよ」
そうムキになり反論する。
私の頬が高揚し薄赤く染まっている。
自分でも顔が熱いのが分かる。
「あんたがそんな目をしていたから。
人生が窮屈でたまらなくて、ここから抜け出したいと全身が訴えていた」
「……」
私の口は開こうと、直径3センチの「お」の形に唇がなっているが、続きが紡がれることは無い。
反論の仕様がないからだ。
余りの本質をついた言葉に思わず絶句してしまう。
目にうっすらとだが、透明の液体がたまりはじめる。
だが、ここでいったん冷静になるため深呼吸を始める。
そのお陰か、なんとか睫毛に涙の粒がのることは無かった。
窓から風が吹き込み、カーテンが大きく膨らむ。
途端に、潮騒の香りを運んで部屋に満ちるてくる。
一拍あけると、優しい声でこう聞こえる。
「だから、あんたをこの緊急避難所に連れてきた」
そういうと、この男は、大磯 怜司と名乗る。
今年27歳になるのだという。
私の前に来て屈み、目を見つめてくる。
私はときたら、大きな勘違いをしたことを謝るべきか、まだ警戒するべきか迷っている。
思わずふいっと目を背けてしまう。
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