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そうして、続けて聞いてくる。
「あんたは何から逃げているんだ? 」
彼の持つアイスコーヒーから、濃い豆の匂いがする。
「え? 逃げる?」
思いもよらない言葉に、私の目が点になる。
「人生か? 退屈さか? 人間か?」
缶を長い指で持っている。
その指の隙間から水の雫が垂れた。
私はソファーの上で膝を抱えると、ここに至るまでの原因に思考を巡らせる事にする。
「焦らなくていいから、ゆっくりと喋れよ」
そういうと、どっかりと隣に腰かけてくる。
距離が近い、彼の体温が伝わってくる。
尚も、私は思考の海の中に漂っている。
すると、彼は携帯を取り出す。
先程の画像を眺めている。
隣に座わる素のままの17歳の女の子である自分をまじまじと見比べているようだ。
「不思議だな、さっきのあんたは20歳を超えた大人びた表情をしていたのに」
「今なんて、高校生そのものにしか見えない」
そう私を見つめて、感想を述べてくる。
幼い私では、彼の欲望からしたら不足なのかもしれない。
「さっきの続きをしようか。今度は海の前に立ってくれよ」
と彼は言う。
いや、それとも、私と言う新たな何かの刺激が欲しいのかもしれない。
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